わかちあい   
中国管区 
マテオ・リッチの心を受け継いで


 中国での宣教を夢見ながら、本土上陸を目前にフランシスコ・ザビエルは1552年に上川島で亡くなった。奇しくもその年、マテオ・リッチはこの世に生を受け、後にザビエルの夢を実現させることとなる。リッチの没後500周年を祝う今年、そのリッチの心に息吹かれながら中国管区がどのような働きをしているかを紹介したい。

人と人を繋げる対話の使徒マテオ・リッチ
 リッチの生涯について学んで驚かされるのは、彼が博学の知識を有し、科学の分野で大きな貢献をしたということだけではない。彼がいかに中国の人々に受け入れられ、愛されたかということである。当時の皇帝のリッチへの信頼は厚く、リッチはその許可を得て北京の王宮からほどないところに居を定め、教会を建設するに至った。彼に続く宣教師によって30万人を越える信者を得たといわれている。そのような宣教の実りを生み出したのは何だったのか。それは、リッチの他者への敬意、あらゆる人に共通の人間性を見て友人となっていく霊性であったと言われている。
 リッチは中国文化、その儒教の社会倫理を尊重し、改宗者が儒教や祖先崇敬の慣習を保持するのを認めた。彼が行った文化適応の数々はよく知られているが、それを宣教の手段としてのみ捉えてしまうならば、彼の心の深みはわからない。彼は福音の種がすでにすべての人々に蒔かれていると信じ、だからこそ相手から学ぼうとしただ。ヨーロッパ文化を中国語に翻訳するだけではなく、中国文化をヨーロッパ社会へ紹介し伝えたのである。文化と文化の架け橋となること、人と人を繋いでゆくこと、愛を創造的に実現していくこと、これがリッチの夢だったのではないか。そしてその遺志は今なお中国で働くイエズス会員へと受け継がれていると感じる。

中国管区の創造的取り組み
 イエズス会は中国ミッションを世界的最優先課題と位置づけ、35総会第三教令はこのように述べる。「中国は、東アジアだけではなく、人類全体にとって重要な位置を占めている。わたしたちは、この国民に敬意を払って対話を続けたい。中国は平和な世界を実現するための重大な鍵であり、その国民の多くがキリストのうちに神と霊的に出会うことに憧れを持ち、わたしたちの信仰の伝統を豊かにする大きな力を秘めているからである。」
 中国本土での宣教は決して容易ではない。現在中国の教会は政府の公認する教会(公開教会)と非公認の教会(地下教会)という二つの共同体に分裂し、司牧活動が認められているのは中国国籍を持つ公開教会の教区司祭のみであり、修道会は法律上存在を認められていない。そのような限界を持ちながらも、イエズス会は様々な取り組みをしている。中国本土、澳門、香港、台湾を管轄領域とするイエズス会中国管区は数十年前に設立され、澳門に本部が置かれている。澳門を拠点とするソーシャル・サービスセンターは、本土の山村で貧しい生活を余儀なくされているハンセン氏病患者の生活を援助するための基金を設け、彼らと生活を共にしてくれる人々を見つけてサポートするといった取り組みをしている。台湾のメディア・センターが製作したマテオ・リッチ、アダム・ショールといった中国宣教師のドキュメント番組は、本土でも繰り返し放送され、数百万人の視聴者を得ている。知的分野での貢献を旨とするリッチ・インスティチュートはキリスト教関係の本を出版し、国際シンポジウムを主催するたび本土から学者を招き、中国本土との対話に取り組んでいる。

 しかし、中国管区の取り組みは、このような間接的方法、後方支援にとどまらない。ザビエル、リッチの大いなる望みは、道なきところに道を見つけるようにと管区会員に呼びかける。本土においては、留学生に中国文化を教える北京センター、北京の国際経営倫理センター、中国有数の大学に数えられる広州の中山大学に設立されたイグナチオ的価値観を伝えるサービス・ラーニングセンター、といった三つのセンターを有している。また、数名のイエズス会員が大学で教職に従事している。
 このような知的分野だけでなく、霊性の分野でも本土の人々の只中へと切り込んでゆく。イグナチオ的価値観と霊性を持ったボランティアを養成して派遣すること、ユース・ミニストリーのグループを設立して18週間のトレーニングプログラムの後にキャンパスミニストリーとして派遣することを行っている。信徒の自主的活動を活発化させるため、少数民族の人たちの中にカテキスタを養成したり、CLCと協力して都市から離れた地域における信徒養成にも取り組んでいる。翌年にはそれらの諸地域に、信徒のリーダーを有する信仰共同体が20ほどできる予定であり、これらの貢献は地元の司教たちにも感謝されている。また心ある教区司教たちに協力を呼びかけ、教区の神学生たちに霊操をさずけようとする試みをもある。神学生たちの霊的同伴をすることで、公開教会と地下教会の和解を促進することを願う教皇ベネディクト16世の呼びかけに応えることができるだろう。

 さまざまな制限の中で取り組まれる中国管区のミッション。このような状況で想像だにしない宣教と奉仕の道を見出している中国管区に驚かされる。そして複雑な状況下で寛大にも取材に応じてくれたイエズス会員に感謝したい。その会員に私の驚きを伝えると、このように答えてくれた。「確かに論理的には、イエズス会は中国においては違法の存在であり、あらゆる司牧活動が認められていない。しかし、いつだって奉仕する道は見つけられる。私たちはイエズス会員なんだよ。」この会員の寛大さ、そしてこの言葉のうちに、マテオ・リッチの志が受けつがれていることが感じられないだろうか。


 
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