わかちあい   
インドネシア管区 
宗教の壁を越えて


   インドネシアは、宗教、民族、人種、文化、言語などの点できわめて多様な国である。インドネシア中央統計局によれば、2億5000万の人口のうちの88.2%がイスラム教、5.9%がプロテスタント、3.1%がカトリック、1.8%がヒンドゥー教、0.8%が仏教、0.2%がその他(伝統的土着宗教など)である。12世紀以降イスラム教はインドネシアに広まったが、今やインドネシアは世界一のイスラム教徒人口を誇っている。北スラウェシ、東ヌサ・テンガラ、西カリマンタンといったキリスト教の強い一部の地域を除いて、キリスト教徒はイスラム教徒とともに暮らし、仕事をしている。インドネシアにおける諸宗教の交わりは複雑である。1999年から2000年にかけて、モルッカ諸島でイスラム教徒とキリスト教徒の間の対立が激化し殺し合いにまで発展した事例に見るとおり、それは時として大きな困難を伴う。

 「信仰への奉仕は、他の宗教体験への開きなしにはありえない。正義の促進は、他の宗教の人びととの協力なしにはありえない」(34総会第2教令)。「信仰への奉仕と正義の促進」を掲げるイエズス会にとって、「宗教間対話」は根本的なミッションである。
 インドネシアのイエズス会員の中には、大学や神学校でイスラム教とキリスト教の宗教間対話に取り組む専門家がいる。ヘル・プラコサ神父は、2008年1月に行なわれたイスラム教体験プログラムに関わった。このプログラムには、アメリカ合衆国のイエズス会バークレー神学校から12人の学生と2人の教授が参加し、インドネシアのサナタ・ダルマ大学神学部の学生スタッフが同伴した。彼らは中央ジャワにある二つのプサントレン(イスラム教の小神学校)を訪問し、そこに滞在して、イスラム教の聖職者や学生たちと神学的対話を行なった。
 また2009年7月には、プラコサ神父とグレッグ・ソエトモ神父は、18人の養成中のイエズス会神学生に同伴して、同じく中央ジャワのプサントレンで2週間の体験プログラムを行った。さまざまなイスラム教施設への訪問、イスラム教との学生たちとの自由な話し合い、プサントレンのプログラムへの参加などを通じて、彼らは互いに自由な宗教間対話を実践し、新自由主義、宗教原理主義などのデリケートな問題を論じ合った。
 しかし、インドネシアにおける宗教間対話は神学的なレベルだけではない。ジャカルタのイエズス会神学生の中には、スラムで、墓地で、また高速道路の高架下で、貧しいイスラム教徒の子どもたちに読み書きを教えたり、一緒に遊んだりすることで、草の根的な宗教間対話を実践している者たちがいる。

 サイモン・アンドリアン・ペルモノ神学生は、哲学を学ぶかたわら、東ジャカルタのスラムの子どもたちを支援している。彼らには学ぶ場所がないので、サイモン神学生は墓地で彼らに読み書きや算数を教えている。サイモン神学生は、実際にごみ箱をあさって暮らす貧しいイスラム教徒たちと生活をともにした経験から、貧しい人びとが教育を受けること、食物や水や泊まる場所を見つけることがどれほど困難であるか、身をもって知った。インドネシアにおいて、イエズス会員として貧しい人びとのために、また貧しい人とともに働くことは、必然的にイスラム教徒のために、また彼らとともに働くこととなる。異なった宗教的背景にもかかわらず、人権と平等のためにともに闘うとき、彼らと自分との間に距離や壁がまったくなくなることをサイモン神学生は実感している。
 ヨハネス・アドリアント神学生は、環境問題に取り組み、生ごみの有機的リサイクルのシステムを作る活動に関わることで、汚染されたシウリング川の河岸に住む貧しいイスラム教徒たちを支援している。ヨハネス神学生は、彼らとともに環境問題に取り組むことで生まれる、親しい対話の実践が、互いの間に理解と寛容の心を生むことを体験している。
 アーネスト・ジャスティン神学生は、社会の片隅に追いやられた貧しい家庭の子どもたちのためのある変わった学校でボランティア活動を行なっている。それは有料高速道路の高架下に作られたその場しのぎの学校である。子どもたちの父親は工場で労働するかごみをあさって生活しており、母親の仕事は主に洗濯か裁縫である。アーネスト神学生は読み書きや算数を教えるかたわら、親を敬うことや身の回りをきれいに保つことといった基本的な価値観をも子どもたちに教えている。こうした教育を通じて、互いにゆっくりと友情と信頼関係を築きながら、彼は生きた宗教間対話を実践しているのである。彼は貧しい人びととの関わりの中から、教育によって人は善へと、また宗教的に開かれた態度へと開かれていくと痛感している。 こうした草の根的な対話の実践は、神学者たちが取り組むアカデミックな宗教間対話を補完する日常の生きた対話として機能している。
 
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