わかちあい   
第3 教令 ー 今日のわたしたちのミッションへのチャレンジ 
第3 教令
今日のわたしたちのミッションへのチャレンジ
最前線に派遣されて


I. ミッションの再確認
1.  キリストのミッションに仕えるわたしたちは、まず感謝の心をこめて、近年主からいただいた数々の恵みを思い起こす。わたしたちが会員として共に生活するなかで、第二バチカン公会議の呼びかけに応じて、ミッションや行動様式を刷新し、適応を図ってきた。1
2.  公会議以来聖霊は、総会に集ったイエズス会全体を、次のような確信へと導いた。  「キリストから受けたミッションの目的は、基本精神綱要に示されているように、信仰に奉仕することである。このミッションの統合原理とは、信仰と、神の国の正義の促進との間の不可分的な結びつきである。」2
3.  34総会では、それまでの経験を振り返って識別し、文化受容と対話がミッション遂行における私たちの行動様式の基本的要素になれば、イエス・キリストに対する信仰への奉仕と、キリストの教えた神の国の正義の促進が、現代社会において、実り豊かに達成される、という結論に達した。3 わたしたちのミッションを、教会の福音宣教全体の一部であり、ここで挙げた要素をすべて含む「一つでありながら多様的な現実」として経験するのである。4 ここで、わたしたちの修道生活や使徒的活動に意味を与えるものとして、このミッションを今一度確認したい。
4 ヨハネ・パウロ二世回勅『救い主の使命』41、「ミッションは一つの、しかし複雑な現実であり、さまざまな方法で進展する。」52-54、55-57参照
 「このように、わたしたちのミッションの目的(信仰への奉仕)とその統合原則(神の国の正義へと方向づけられる信仰)は、文化に順応した福音の宣布や他宗教との対話とダイナミックに結びつく。」5
4.  近年、イエズス会はさまざまな文化や宗教的伝統に属する人々との対話に対して、実り多い取り組みをしてきた。この対話によって、わたしたちの信仰の奉仕と正義の促進が豊かになった。さらに、信仰と正義は単に多くの活動の一部に過ぎないものではなく、各個人、各共同体、そして世界規模の会全体のあらゆる使徒職や共同体生活に欠かせない要素であることも確認した。6
5.  多くのチャレンジが生じる現代社会のなかで、わたしたちは、司牧、教育、社会、マスコミ、霊的活動などを通じて、このミッションのためにさまざまな創意工夫を重ねてきた。それぞれの使徒職に適した工夫がなされているが、どの使徒職の場合でも、ミッションを「御子と共に置かれる」という恵みとし体験している。この総会は、主と共に働くように呼ばれて、自分たちの生涯を惜しみなく捧げて主に応えてきた数多くの会員と協働者を、感謝の念をもって思い起こす。
6.  わたしたちは、「ローマ教皇のもとに、主とその花嫁である教会にのみ」7  仕えつづけることを望みながら、総会に向けられた教皇の言葉を大きな励ましとして聞いた。
 「この千年期の初めに当たり、教会や社会のこの状況のなかで、イエズス会の皆さんが、創立当初からのカリスマを忠実に守りつつ、ミッションの遂行に邁進しつづけるよう、わたしは今日、奨励したいと思います。わたしの前任者たちがあなたがたによく語っていたように、教会は皆さんを必要とし、皆さに期待しています。そして相変わらず皆さんを信頼して頼りにしています。」8
7.  わたしたちが直面する新たなチャレンジに対応するため、今までのミッションの経験と照らし合わせて、さらに考えていきたい。

II. ミッションの新しい状況
8.  わたしたちがミッションに従事する今日の状況には、激しい変化や深刻な対立、新たな可能性が満ちている。 教皇の言葉を借りると、「この総会が開かれているこの時期に、社会的、経済的、政治的な面で大きな変動が起きています。倫理、文化、環境の諸問題が深刻となり、種々の対立が生じていますが、他方、民族を越えてより密接に交流し、人と知り合って対話する新たな可能性が生まれ、また平和を深く求めています。こういった状況のすべては、カトリック教会に対する大きなチャレンジであり、現代人にどのようにして希望と救いのみ言葉を告げることができるかを考えさせるものです。」9
9.  わたしたちはグローバルな世界に生きている。34総会で、「一つの共通遺産にすべての民族が相互に依存している、という意識が高まっている」10 とすでに指摘された。この相互依存は急速に進行しつづけており、その結果、相互のかかわり合いが増大し、その影響が、生活のあらゆる面で深く感じられている。文化的、社会的、政治的機構が相互関係にあるために、相互依存の影響が波及しつづけ、信仰と正義というわたしたちのミッションの核心、および宗教や文化との対話のあらゆる側面にまで及んでいる。
10.  グローバリゼーションは、すべての文化に影響を与える世界文化をも生み出した。多くの場合、これは文化を均質化することになったり、それぞれの文化の特徴を奪い、個人やグループが自分たちの文化を発展させる権利を否定しようとする政策ともつながることになってきた。この激変のさなかで、34総会も言及したポストモダニズムが、11 現代世界やわたしたちイエズス会員の思考と行動に大きな影響を及ぼしつづけてきた。
11.  瞬時のコミュニケーションとデジタル・テクノロジーの新しい世界、世界規模の市場の新世界、平和と発展が世界的に望まれるなかで、わたしたちはますます緊張と矛盾に直面している。わたしたちは自律を好み、現在を充実させようとする文化に生きているが、今の社会に特に必要なのは、連帯して未来を築き上げることである。情報伝達の手段は発達したが、孤立や疎外感を経験することも多くなった。ある人たちが大きな利益を得ている一方、他の人たちは置き去りにされ、排除されている。世界はいちだんと国家を越えるものになっている一方、各地で個別のアイデンティティを主張し固守しようとしている。科学知識が生命の深層を解明するまでに発達しているが、生命の厳そのものやわたしたちが住んでいるこの地球自体は危機にしている。

III. 正しい関係を築くために呼ばれて ― 和解のミッション
12.  このように大きな変貌を遂げたグローバルな世界では、わたしたちは、信仰の奉仕、正義の促進、文化や他宗教との対話に奉仕する召命を、さらに深く理解したいと願う。特に、神、人間相互、そして被造界との正しい関係を築くという使徒的責務に照らしながら、この召命の理解を深めることを望む。12
13.  ルカ福音書では、イエスはナザレの会堂で公生活を開始した。13
イエスは預言者イザヤの言葉を読み上げ、聖霊によって油を注がれたことを知り、貧しい人に福音を、捕らわれている人に解放を、目の見えない人に視力の回復を、圧迫されている人に自由を告げ知らせた。こうしてイエスは、自らの存在と活動を、ユダヤ民族の預言者の伝統に根付かせた。イエスは、預言者たちと同じ情熱で神の正義を宣言した。つまり、神、そして人間相互(そのなかで特に最も小さい者)、さらに大地との正しい関係を築く責務を訴えた。14
14.  イエスは神の愛と慈しみのメッセージを宣言して、物理的、社会的、宗教的境界線を越えた。イエスの和解のメッセージは、イスラエルの人々に対して、またイスラエルの地理的、精神的境界線の外側にいる人々、特に徴税人、売春婦、罪人、そして見捨てられて除け者にされた人々に対して宣言された。神との和解、人間相互の和解をもたらすイエスの奉仕職には、境界線がなかった。権力者に語りかけ、心を変えるように訴えた。罪人、貧しいやもめ、失われた羊に特別な愛情を示した。イエスがくりかえし描き出した神の国は、すべての関係が神のうちに修復されている世界であった。イエスは神の国に逆らう権力に立ち向かったので、その戦いは十字架上の死につながった。自らのミッションを忠実に果たすために、死をすすんで引き受けた。十字架の上で、イエスの言行が最終的な和解を表現したものとして啓示される。十字架につけられて死に、復活された主によってもたらされた和解である。この主と共に新たな創造が到来する時、すべての関係が神のうちに修復されるのである。15
15.  イグナチオと最初の仲間たちは、未開拓地にいる人々にも、社会の中心にいる人々にも手を差し伸べることが重要であると心に留めていたし、何らかの理由で不和に陥った人々を和解させるように努めた。16 「主をまだ知らない人々や文化に主を告げ知らせる」17 ために、イグナチオは、中央のローマから会員を最前線へ、新しい世界に派遣した。ザビエルをアジアに派遣した。ザビエルに続いて、幾千もの会員がさまざまな文化に福音を宣べ伝え、知識を分かち合ったり学んだりした。会員が、豊かな人と貧しい人、教育のある人と教育を受けていない人などを隔てる境界線を乗り越えていくのも、イグナチオの望みであった。彼はトリエント公会議に出席していた会員に、公会議でどのように振舞うべきか手紙を書き送ったが、そのなかで病人の世話をもするように強く求めた。イエズス会はローマやヨーロッパの大都市に学校を設立する一方で、世界各地の村で子どもたちにも教えたのである。
16.  イグナチオと最初の仲間たちがラ・ストルタでミッションを受けたのと同様に、わたしたちも御父によってキリストと共にミッションに遣わされる。キリストは復活し、栄光に入っておられるが、今も十字架を背負って、完全な和解をまだ体験していないこの世界で働いておられる。暴力、紛争、対立に引き裂かれたこの世の中で、わたしたちは他の人々と共に、神に用いられる者となるように呼ばれている。その神は、「キリストによって世をご自分と和解させ、人々の罪の責任を問わなかった」18 方である。和解のミッションを委ねられたわたしたちは、正しい関係を築いて新しい世界を構築するように、またあらゆる分裂がなくなり、すべての人に神が正義を回復してくださる新しいヨベルの年をもたらすように、呼ばれている。
17.  境界線を越える橋をかけるのはイエズス会の伝統であり、今日の世界の状況では特に重要である。砕かれ分断された世界をつなぐために必要なのは、ただ、キリストの愛と、海を越えてもザビエルとイグナチオを結んだような心のきずなと、世界のどこにでもわたしたちを派遣する従順によって、わたしたちが一つになることである。19

IV. わたしたちの使徒的応答
18.  キリストのミッションに仕えるわたしたちは、神、人間相互、被造界と正しい関係を築くキリストを援助するように招かれている。「わたしたちの世界は善と悪の戦いの舞台となっている」20 と、教皇も改めて指摘した。わたしたちは今一度「二つの旗」を黙想して、主のみ前に自らを置く。世界には強い破壊的な力が潜んでいるが、同時に神ご自身がこの世界を満たし、和解と平和を推進するようあらゆる文化と宗教の人々に促しておられる。わたしたちが働くこの世界は、罪と恵みが共存する場である。

神との和解
19.  『霊操』のなかで、キリストのうちに神との和解を新たに体験し、それを深めていくように導かれる。そこから希望を育む恵みを受けるので、喜びと敬意を持ってその恵みを人々と分かち合うように呼ばれる。グローバリゼーションや新しい情報技術によって、世界は拡大し、イエス・キリストについての良い知らせとキリストが宣べ伝えた国を意欲的に告げ知らせるために新しい場が多く与えられるようになった。み言葉を宣言し、秘跡のなかに生きるキリストを記念するわたしたちの使徒的活動は、イエズス会のミッションや共同体生活にとって、相変わらず根本的なものである。しかも、その活動は、教会の最も奥深い本質に関わる三つの責任に与るものとして考えなければならない。21 それは、神のみ言葉の宣言 (kerygma-martyria)と、秘跡の執行( leitourgia)と、愛の奉仕の実践( diakonia)である。この責任を果たすにあたり、あらゆる要素を含む包括的福音宣教方法を探り、「他の人々が踏み込んでいない、あるいは踏み込むのが困難であると見なしている地理的、精神的な場に踏み込む」22 ように努める。同時に、ミッションの対象となる文化的状況から何が要請されているのか、常に配慮する。
20.  グローバリゼーションは、世界を支配しようとする文化の広がりを早めてきた。それによって、多くの人が情報と知識に広くアクセスし、個人の自覚と選択の自由が向上し、新しい考えや価値を受け入れる姿勢を持つようになった。同時にこの文化の特徴は、主観主義、道徳的相対主義、快楽主義、実用的物質主義などであり、「神および人について誤った、あるいは表面的なとらえ方」23 とつながっている。多くの社会では、 ますます孤独を感じ、人生の意味を見失っている。これこそ、わたしたちにとって新しい使徒的チャレンジと呼びかけである。すべての使徒職の場で、この現状にもっと真剣に直面し、「多くの人にとってまだ隠されているか、見分けることができない主の本当の顔を告げ知らせる」24 ことができるように、信仰と理性、文化と道徳、信仰と社会の関連を扱う対話や省察を推進するように呼ばれている。
21.  急速な文化的変動に伴って、人々は内面的空虚さを体験し、通俗的宗教心に新たな関心を示し、人生の意味を今一度探し求め、時として宗教組織の外に霊的渇望を癒すものを探している。『霊操』は創立当初より貴重なマニュアルとしてわたしたちに委ねられたものであり、多くの現代人にとっても貴重な手助けとなっている。『霊操』は、祈りの生活に人々を導き、祈りの生活を充実させる手引きである。すべてにおいて神を探し求め、そのみ旨を識別できるようにし、信仰をいっそう深く、いっそう現実的なものとする。自分の人生を整えることに難しさを感じる人々は、『霊操』の体験によって助けられる。神と自由に対話できるからである。総会は、会員に『霊操』を与えるように勧める。『霊操』を通じて、「創造主が直接に被造物に働きかけ、被造物が直接に創造主に接する」25 ことができるようになり、また人々がキリストのうちに神と深く交わり、またそれによってみ国に奉仕することができるようになる。
22.  わたしたちは多くの宗教や文化を持つ世界に住んでいる。伝統的な信条が崩壊し、文化が均質化する傾向は、さまざまな宗教的原理主義を助長している。一部の人たちは、神への信仰を悪用し、人々や生活共同体を分裂させ、社会生活の構造そのものを引き裂く対立や緊張をもたらしている。これらの変動は、文化や宗教の最前線にまでわたしたちを呼び出す。教会が勧めている四重の対話26 に取り組んでいる会員と協働者を力づけて支援するほかに、すべての人に注意深く耳を傾け、善意の人々やさまざまな善意の共同体を結ぶ橋をかける必要がある。
23.  急速に変動するこのポストモダン文化において、わたしたちは、教育使徒職や司牧活動を、特に若い人々の間で実践する方法を、慎重に識別しなければならない。わたしたちは若い人々と共に歩みながら、彼らの寛大さと思いやりから学び、わたしたちと若い人々が、弱さやもろさを通して、神と人々との喜びに溢れる交わりを求めて成長できるように、互いに助け合わなければならない。貧しい人々と共に、貧しい人々のために働くボランティア活動に参加することは、若い人たちにとって、他の人々と連帯して生きることを学び、自分たちの人生の意味と方向づけを発見するきっかけにもなる。
24.  キリストの死と復活によって、神との関係が取り戻されたので、わたしたちの信仰への奉仕は、必然的に、み国の正義の促進と、被造界への配慮に至らなければならない。

人間相互の和解
25.  このグローバル化した世界には、人々の間で新たな関係形成を促進してきた社会的、経済的、政治的な働きもあれば、家族の愛情や連帯のきずなを破壊した別の働きもある。多くの貧しい人が困窮の状況から引き上げられたが、他方、国内外の貧富の格差は拡大した。社会の周辺に追いやられている人々の立場からすれば、グローバリゼーションは猛威をふるう力と見え、弱者や貧しい人を排除し、搾取し、宗教、人種、階級、ジェンダーによる排斥を助長するものに見える。
26.  グローバリゼーションの政治的結果の一つは、世界中の多くの国の政治的独立さえ危ぶまれる状況である。国家によっては、この現象を一種の国際社会からの排斥と感じ、国の自尊心が損なわれている。貧しい人々の天然資源も、その国の法律で規制されることなく他の国の利益のために悪用され、国内の汚職もこれと共謀する場合もある。莫大な経済的利益のため、暴力、戦争、武器取引なども誘発されている。
27.  正しい関係を築くことに献身するために、わたしたちは、貧しい人々や社会の底辺に追いやられた人々の視点から世界を見て、彼らから学び取り、彼らと共に、彼らのために行動するよう招かれている。この関連で、教皇もわたしたちに、貧しい人々を優先させる選択は、「ご自分の貧しさでわたしたちを富ませるために貧しい者となられた神( 2 コリ8 : 9 )への、キリスト教の信仰に含まれている」27 と語り、「貧しい人々のなかで、貧しい人々のため」28 のミッションに新たな熱意で献身するようにと、預言者として呼びかけた。
28.  わたしたちは、多くの複雑な問題に直面しているが、多くの好機も与えられているので、それらを利用して富裕層と貧困層との橋渡しをするように求められている。政治権力者と自らのニーズを表明できない人々との間に立ち、相互支援の体制を築き上げることもできる。わたしたちの知的使徒職は、このような橋渡しの貴重な助けとなり、社会問題のメカニズムや相互関連を徹底的に解明する新しい思考法を与える使命を持つ。多くの会員が教育分野、社会事業、研究施設で、あるいは直接に貧しい人々と関わって、すでにこの方面で働いている。さらに他の会員は、企業の社会的責任意識の育成、より人間的なビジネス文化の形成、貧しい人々と共に経済的発展の試みを支援してきた。
29.  グローバル化された世界の特徴のなかには、新しい情報技術も含まれ、わたしたち皆に、特に若い人々に多大な影響を与えている。それらは、国際的なネットワークの構築や支援、権利擁護活動、教育事業、霊性と信仰の分かち合いなどに有力な手段となりうる。本総会は、この新しい情報技術を疎外されている人々のために活用することを、イエズス会各事業体に勧める。
30.  以上述べられた状況に対するわたしたちの対応は、深い信仰から湧き上がるものでなければならない。主はわたしたちを他の人々と共に働くように招く。それは神の国のため、そして人々や被造界との正しい関係を築くためである。こうして、わたしたちは主と協力し、「連帯を促すグローバリゼーション、疎外を解消するグローバリゼーション」29 を目指して、キリストにおける新しい未来を築き上げる営みに貢献する。

被造界との和解
31.  34総会の指示30 にしたがって、ペーター・ハンス・コルベンバッハ神父は研究を委託し、またすべての「会員およびそのミッションの協働者が、霊的、共同体的、使徒的生活においていっそう効果をもたらすようなエコロジー的連帯性を示すように」と31 呼びかけた。これは、疑念や無関心を越えて、わたしたちの住まいであるこの地球に関する責任を促す呼びかけである。
32.  環境への配慮は、神、他の人々、さらに被造界そのものとの関わり方に影響を及ぼす。環境への配慮は、「わたしたちの旅の出発点でも目的地でもある」32 神への信仰と愛の核心に触れる。聖イグナチオはわたしたちに環境への配慮を教えていると言えよう。「原理と基礎」33 では、被造界の善さについて語り、「愛を得るための観想」34 では、被造界における神の生きた現存を描くからである。
33.  エネルギー資源やその他の天然資源の利用および開発の動きによって、大地、空気、水そして環境全体の被る損害がきわめて急速に拡大し、この地球の将来さえ脅かされるようになってきた。水や空気が汚染され、森林が大規模に伐採され、原子力その他の有毒物質が廃棄された結果、死や多大な苦悩が多くの人々、特に貧しい人々にもたらされている。多くの貧しい生活共同体が強制的に移住させられ、なかでも先住住民が特に被害を受けている。
34.  被造界と正しい関係を取り戻そうという呼びかけに注目してみると、環境破壊の結果に苦しむ人々の叫び、総会に寄せられた多数の請願、近年この問題を取り上げた教皇や多くの司教団の教説などに、わたしたちは改めて心動かされる。
35.  総会は、会員や同じミッションに従事する協働者に、また特に大学や研究所に、貧困の原因と環境改善に焦点を合わせた研究や実践を促進するように強く勧める。一方で難民や強制移住者と、また他方で環境保全のために働く人々双方と関わっているわたしたちは、研究施設と協力し、研究成果や権利擁護活動が社会と環境に良い成果をもたらす方法を探るべきである。権利擁護活動も、研究活動も、貧しい人々と環境保全のために働く人々に奉仕するものでなければならない。これらのことを実現するにあたって、「地域によって異なる発展段階を適切に考慮しながら」、35 全体の負担が公正に分けられるべきであるという教皇の訴えに新たに注目する必要がある。
36.  被造界と人間との契約関係36 は、神と、そして人間相互との正しい関係に欠かせない中心的な要素である。説教、教育、黙想指導の際、すべての人がこのことを深く理解するように働きかけ、政治、職場、家庭生活、個人のライフスタイルなどの領域において、この理解にそって行動するように勧めなければならない。

V. 地球規模の優先事項
37.  34総会が提案したこと37 を受けて、上記のグローバルな課題に効果的に対応するために、この総会は、統治のあらゆるレベルにおいて、使徒的計画、実行、説明責任を促進する機構の重要性を強調する。38
38.  近年、イエズス会は、さまざまな方法を探って、管区相互の協力体制を強化する努力を重ねてきた。このため、34総会は「総長は、管区長や地域上級長上協議会議長と定期的に直接に連絡を取りつつ、彼らと共に、普遍的教会のより大きなニーズを識別し、世界的、地域的な優先事項を定める」39 と述べた。
39.  管区や地区の優先事項を尊重する一方で、以下の「優先事項」は「特別に配慮すべき関心」40 を必要とする使徒的分野を示している。現状では、この教令に規定されているミッションの方向性を実行に移すことができる分野であると自信をもって言うことができる。それぞれの地域上級長上協議会と協議した上、ペーター・ハンス・コルベンバッハ神父は次の使徒的優先事項を決定した。
(i)  アフリカ。 アフリカとマダガスカルでの文化的、社会的、経済的相違を理解したうえで、この地域の可能性とチャレンジ、それにイエズス会の多様的使徒職を考え合わせると、この大陸に関して、もっと総合的で人間中心的なビジョンを提示する責任があると考える。これに加えて、すべての会員が、この大陸における信仰の文化受容と正義の促進というイエズス会のミッションに対して、さらに連帯し、効果的に支援するように求め
られている。
(ii)  中国は、東アジアだけではなく、人類全体にとって重要な位置を占めている。わたしたちは、この国民に敬意を払って対話を続けたい。中国は平和な世界を実現するための重大な鍵であり、その国民の多くがキリストのうちに神と霊的に出会うことに憧れを持ち、わたしたちの信仰の伝統を豊かにする大きな力を秘めているからである。
(iii)  知的使徒職は、創立以来、イエズス会の特徴である。会員が各使徒職の分野において直面する複雑ではあるが相互関連のあるチャレンジを考慮し、総会は、この使徒職を強化刷新するよう呼びかける。これは、教会がわたしたちに求めている重要な知的貢献ができる大切な分野である。養成期間中、会員のための高等研究が奨励され支援されなければならない。
(iv)  ローマにある多管区の共営施設は、教皇から直接に委託されているイエズス会の特別なミッションである。41   イグナチオは、「教皇からのミッションを最も重要なものとして取り扱う」42  べきであると書いた。本総会は、会全体の使徒的優先事項としてローマの会宅や共同の事業体への献身を再確認した。そのミッションに最も効果的に従事するためには、該当事業体やイエズス会自体による戦略的企画や評価が継続的になされなければならない。43
(v)  移住および難民。 アルペ神父が難民の窮状にイエズス会の注意を向けて以来、種々の理由による強制移住の現象は著しく増大している。これらの大規模な移動は、無数の人々に多大な苦難をもたらしている。したがって、総会は、他国からの難民、国内でも退去させられたり、売買されたりする人々を含む移住者のニーズに応えることが、引きつづきイエズス会の使徒的優先事項であることを再確認した。さらに、イエズス会難民サー
ビスが現在の憲章と指針にそって活動することを再確認する。
40.  わたしたちは、総長が引きつづき、会の優先事項を識別し、上記の優先事項を吟味し、それらの具体的内容を更新し、監督及び評価可能な企画やプログラムを作成するよう勧める。

VI. 結び
41.  わたしたちのミッションは、会の事業体に限定されない。主との個人的、共同体的交わり、主における友としての相互の交わり、貧しく社会の周辺に追いやられている人々との連帯、被造界に対する責任ある生活様式、これらすべては会員としての生活の重要な側面である。わたしたちがミッションを果たす際に宣言し行っていることが真実であると、証しするものである。会全体としての証となる貴重な場は、わたしたちの共同体生活である。イエズス会の共同体は、ミッションのためにあるだけでなく、それ自体がミッションであると言える。44
42.  創造的従順のうちに生き、ミッションにおける協働者を評価するすべを知っているメンバーを持つ使徒的組織は、世界に力強い証を与える。まず、わたしたちの使徒職や事業体のなかで、わたしたちの主イエス・キリストへの信仰が、神、人々、そして被造界との正しい関わり方によって、実現されなければならない。
43.  世界規模で考えると、国際的多文化的共同体として、イエズス会が持つ可能性はきわめて豊かであることに注目すべきである。この特徴を生かして行動するならば、わたしたちの使徒職の効果を高めるだけではなく、神の子らが和解して一つになる可能性を、分裂した現代社会に示すことができる。
44 ペーター・ハンス・コルベンバッハ「共同体生活について」(1998年3 月12日) AR 22( 1996-2002) 276-289

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1 第二バチカン公会議『修道生活の刷新・適応に関する教令』2
2 34総会第2 教令14
3 34総会第2 教令14-21
5 34総会第2 教令15
6 32総会第2 教令9
7『基本精神綱要』(Exposcit Debitum)( 1550年) 3 (MHSI 63, 375)
8 ベネディクト十六世「イエズス会35総会に対する訓示」(2008年2 月21日) 2
9「訓示」2
10 34総会第3 教令7
11 34総会第4 教令19-24
12 Compendium of the Social Doctrine of the Church, 575
13 ルカ4 :16以下
14 ヨハネ・パウロ二世回勅『紀元2000年の到来』(1994年)11-13
15 2 コリ5 :19、エフェ2 :16
16『基本精神綱要』(Exposcit Debitum)( 1550年) 3 (MHSI 63, 376)
17「訓示」3
18 2 コリ5 :19
19『会憲』 655-659
20「訓示」6
21 ベネディクト十六世回勅『神は愛』(2005年) 25
22「訓示」2
23「訓示」3
24「訓示」4
25『霊操』15
26 34総会第5 教令4 (生活、行動、宗教的体験、神学に関する意見交換による
対話)
27「訓示」8
28「訓示」8
29 ヨハネ・パウロ二世「世界平和の日のメッセージ」(1998年1 月1 日) 3
30 34総会第20教令2
31 ペーター・ハンス・コルベンバッハ「壊れた世界に生きるわたしたち」序、
Promotio Iustitiae 70( 1999年4 月)
32 ベネディクト十六世「世界平和の日のメッセージ」(2008年1 月1 日) 7
33『霊操』23
34『霊操』230-237
35 ベネディクト十六世「世界平和の日のメッセージ」(2008年1 月1 日) 7
36 ベネディクト十六世「世界平の日のメッセージ」(2008年1 月1 日) 7
37 34総会第21教令
38 35総会第5 教令12, 18-21
39 34総会第21教令28
40.ペーター・ハンス・コルベンバッハ「わたしたちの使徒的優先課題」(2003 年1 月1 日) AR 23, 1 (2003年) 31-36 「使徒職に関する優先課題のこの選択は…祈りに基づく識別をしながら、最も大切で緊急のニーズ、普遍的なもの、イエズス会が今快く対応するように招かれているもののいくつかを見極めた選択である。」
41 ベネディクト十六世「グレゴリアン大学訪問時の訓話」(2006年11月3 日)
AR 23, 4 (2006年) 696-697
42『会憲』603
43 34総会第22教令参照
44 ペーター・ハンス・コルベンバッハ「共同体生活について」(1998年3 月12日) AR 22( 1996-2002) 276-289
 
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